コンサルタントは自らが解決の答を持っています。同じように組織のリーダーも意識しないうちにコンサルタントになっています。その大きな理由は、いままでのキャリアを通して専門知識の蓄積や成功体験、失敗体験の積み重ねによって、事に当たっては自分の答を持つことができるようになっているからです。危機管理にあっては、それが強みになりますが、部下の思いを引き出して部下の成長支援につなげることに対しては障害になることもあります。

 現在、多くの企業で盛んに導入されている1on1ミーティングがなかなか機能しない原因もそこにあります。

 組織のリーダーやコンサルタントは、自らの知識や経験を通して出来上がった価値観が、相手の話をそのまま受け止めることを難しくしています。相手の話を聴くことができず、自分が正しいという立場に固執し、相手に教える、相手を指導するというコンサルティングを始めることになります。相手の気持ちを引き出すコーチングでは、コンサルティングをしない、というのが鉄則です。

手法姿勢コンサルティングコーチング
クライアントへの働きかけ導く引き出す
クライアントが目指す姿新たな解決策を得る自分の考えや思いに気づく
クライアントへの目線上から目線横から目線
求められるスキル指導する力聴く力、質問する力、感じる力
答の所在コンサルタント、中小企業診断士、組織のリーダークライアント

 その一方で、“リーダーとは部下に対して明確な指示を出し、チームメンバーを引っ張る者”、という考えにとらわれ、自らのリーダーシップに迷いが生じ、自信が持てないリーダーも多くいます。

 リーダーシップのあり方は、昔と今とでは真逆になっています。「オレについてこい」「部下は先輩の背中を見て育つ」という昭和型リーダーシップではいまは通用しません。ピーター・ドラッカーは次のように言っています。「これからのリーダーは、知識労働者をマネジメントしていく。知識労働者は上司よりも自分のやっていることについて、より多く理解しているプロフェッショナルである。過去のリーダーの仕事は「命じること」だが、これからのリーダーの仕事は「聴くこと(尋ねること)」が重要になる」と。

 現代のリーダーとは、部下や関係者の気持ちに寄り添い、思いを引き出し、共に物事に当たることのできる人を指します。そのためには、部下や周りの人たちとの信頼関係を築くことが求められます。コンサルティングではなく、相手の気持ちに寄り添い思いを引き出すコーチングの学びと技能が必要になる理由がここにあります。